脂肪肝

MASLDとは?脂肪肝の新しい考えかた

最近、脂肪肝の診断名が「MASLD(代謝異常関連脂肪肝疾患)」という新しい呼び方に変わりつつあります。これは、肝臓だけでなく、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病と深く関係していることが分かってきたためです。
ここでは、MASLDとは何か、そしてなぜ放置してはいけないのかを、わかりやすくご説明します。

脂肪肝は「MASLD」へ:代謝異常の肝臓表現型

従来「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」と呼ばれていた脂肪肝は、2023年以降「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」へと名称変更されました。これは単なる呼称変更ではなく、脂肪肝が糖尿病・高血圧・脂質異常症・肥満などの代謝異常と密接に関係する生活習慣病の一部であるという認識の転換です。
MASLDは、肝臓に脂肪が5%以上沈着し、かつ代謝異常(糖尿病・脂質異常症・肥満など)を伴う状態を指します。進行すると肝炎(MASH)、肝線維化、肝硬変、肝細胞癌へと移行する可能性があります。

果糖ブドウ糖液糖(HFCS)の影響

果糖ブドウ糖液糖は、清涼飲料水や加工食品に多く含まれ、肝臓に直接的な脂肪蓄積を促すことが分かっています。

  • 果糖はブドウ糖よりも肝臓での脂肪合成を強く促進し、インスリン非依存的に代謝されるため、脂肪肝を悪化させやすい。
  • 液体で摂取すると吸収が早く、肝細胞の構造的ダメージを引き起こす可能性も報告されています。
  • MASLDの予防に、果糖含有飲料の制限が重要です。

脂肪肝(MASLD)の治療薬:最新の選択肢

脂肪肝の薬物療法は、糖尿病や肥満を伴う場合に特に有効です。以下は注目されている薬剤群です。

薬剤作用・特徴備考
SGLT2阻害薬血糖・体重・ALT・肝脂肪量の改善糖尿病合併MASLDに推奨
GLP-1受容体作動薬
(GLP1RA)
食欲抑制・体重減少・糖代謝改善セマグルチドなど肝炎改善の報告あり
ビタミンE抗酸化作用で肝炎改善非糖尿病患者に有効例あり。長期使用は慎重に。
EPA製剤抗炎症・脂質改善・肝脂肪減少脂質異常症合併例に有効
スタチン系LDL低下・動脈硬化予防肝機能安定例では安全に使用可能

※日本では一部薬剤が自由診療扱いのため、導入には医師の裁量と患者の同意が必要です。

タンパク質摂取の最新知見

タンパク質摂取は、MASLDの改善においても重要な役割を果たします。

  • 高タンパク・低糖質食は、肝脂肪減少と筋肉量維持に有効。
  • 特に植物性タンパク質(大豆・豆類)は、肝臓への負担が少なく、抗炎症作用も期待されます。
  • ただし、過剰摂取は腎機能や肝機能に影響する可能性があるため、個別の栄養指導が推奨されます。

脂肪肝は脂質異常症の一部か?

脂肪肝(MASLD)は、脂質異常症と密接に関連する生活習慣病の一種と位置づけられます。

  • 肝臓に脂肪が蓄積する背景には、中性脂肪やLDLコレステロールの異常が関与。
  • MASLDは、脂質異常症・糖尿病・高血圧などと共通の病態(インスリン抵抗性・慢性炎症)を持つため、生活習慣病の「肝臓型表現」と捉えるのが現代的です。

健康診断での「肝機能異常」などが気になる方

先日「埼玉県肝炎医療研修会」に参加し、B型・C型肝炎の最新治療や地域連携の取り組みについて学ぶ機会をいただきました。肝炎ウイルスによる肝障害と、生活習慣に起因する脂肪肝(MASLD)は、いずれも”沈黙の臓器”である肝臓に起こる病気です。
当院では、肝機能異常の背景にある病態を丁寧に見極め、必要に応じて肝炎ウイルス検査や生活習慣改善の支援も行っています。肝臓の異常は自覚症状が少ないため、健康診断での「肝機能異常」などが気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。

とうやまクリニック 院長

頭山 尚子(とうやま しょうこ)

所属学会・専門

医学博士・日本内科学会認定総合内科専門医・日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・日本医師会認定産業医・順天堂医学会・東亜医学協会・日本超音波検査学会

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